デザイナーが語る15.0%
第6回
時間や場所を問わず アイスを楽しむためのデザイン
アイスクリームスプーン「15.0%」の3年目の試練を乗り切るべく、新作として作り始めた携帯用アイスクリームスプーン 「sesame」。いつでもどこでもアイスを食べられるようにスプーンを小型/軽量化し、カバンなどに付けて持ち歩くためのユニークなストラップを考案しました。

ストラップの素材は、口に入れても安全なシリコンを選んだのですが、着脱するときの感触がベストになる形状とシリコンの柔らかさのバランスを見つけるのに苦労しました。「感触」というのは画面上の3Dデータでは判断できないので、サンプルを作って検証します。
携帯用アイスクリームスプーンのセサミ「sesame」は、持ち歩きやすくアイスクリーム好きをアピールできるユニークなストラップを付けることで方向性が決まりました。量産を前提とした試作に向けて、ライノセラス3Dアプリ「Rhinoceros」でデータを作成します。この段階で生産に適した形状かどうか、素材自体のコストと重量をチェックしながら進めます。スプーン本体は価格を下げるために前モデルよりもサイズを小さくしましたが、それに伴っておのずと持ち手の部分も小さくなってしまい、これを解決するのが課題でした。検討を重ねた結果、持ち手を前モデルのように膨らませるのではなく、へこませることで解決しました。へこんだ部分に親指の腹を当て、指先だけで持てるようにしたのです。最終的には両端を前後対象のスプーンの形状にし、どちらでもアイスが食べられるようにしました。

トラップの最大の狙いは、スプーンに装着したときに「何だろう?」と振り返って見てもらえるような形状にすることでした。色は半透明なので指定が難しく、決定するまでに時間がかかりました。ストラップの長さもいろいろと試したうえで決定しました。
しかし、3Dデータだけで検証を重ねても実際に持ったときのホールド感や重量感は作ってみないとわかりません。そこで試作に移ります。厚みやプロポーションを変えて何度か試作を繰り返し、最終的な形状を決定しました。
次はスプーンを「携帯」するためのストラップのデザインです。こちらもRhinocerosで検証を重ねたうえで、試作を作りました。伸縮するシリコンを素材に選んだため、伸びることを見越してスプーンの装着部分を設計するのですが、着脱するときの感触はやっぱり作ってみないとわかりません。シリコンの形状と硬度を何とおりか変えて試しました。付け外しの感覚や柔らかさは数値では判断できないので、試作で経験値を積むしかありません。そうして今回の製品自体が完成しました。

パッケージは製品の姿を店頭で見られるように、透明にしました。販売してもらう店舗のさまざまな展示方法に対応できることもポイントでした。もちろん、既発売のスプーンのパッケージと同じく「プレゼント」を意識しています。
そして最後にパッケージデザインです。製品のデザインを進めながら、パッケージのイメージを膨らませます。おそらく「携帯用アイスクリームスプーン」というアイテムは世界初のはずなので、店頭に並べたときに一体何なのかがパッとわかる必要があります。また、お店によっては棚に置いたり、フックに引っ掛けたりと展示方法がさまざまなので、それらに対応できるようにしたいと考えました。
そこで採用したのが、以前から一度トライしてみたいと思っていた「ブリスターパック」。おもちゃの人形のパッケージなどによく使われますが、透明のカバーで商品を包み、中身がそのまま見えるというものです。スプーン本体とシリコンストラップをパッケージの状態で見せ、何だろうと手に取って裏返すと台紙に使用方法やコンセプトが示されているという作戦です。これも専門メーカーさんとデータをやり取りし、試作を繰り返し、完成しました。
(文:寺田尚樹)
アイスっ娘 icecco
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三上朱里(写真左)
2011年に「nicolaモデルオーディション」でグランプリを受賞し、デビュー。「nicola」(新潮社刊)で専属モデルを務める
岩本小弥加(写真右)
「Ranzuki」(ぶんか社刊)専属モデル。岩本小弥加fromj-PadGirlsとして「いーあるふぁんくらぶ」で歌手デビュー。8月27日より「レコチョク着うた」で配信開始