デザイナーが語る15.0%
第7回
携帯用アイススプーンが最も活躍するのは新幹線

アイスクリームが大好きな人に向けたプロジェクト「15.0%」。新作のストラップ付き携帯用スプーン「sesame」がとうとう完成しました。これで、いつでもどこでもすぐにアイスが食べられます。さあ、恥ずかしがらずにアイス好きを思う存分アピールしてください。
やっと完成したアイスクリームストラップですが、何だか謎の物体のような形です。メモリースティックのようにも見えるし、何かの道具のようにも見えます。でもこの謎めいた感じが狙いでした。ストラップをカバンや腰にぶら下げている人に「それ、何?」と尋ねる人がひとりでもいれば、作戦成功です。そして聞かれた人は、よくぞ聞いてくれましたとばかりに、「これはね......」と携帯用のアイスクリームスプーンであることや熱伝導の高いアルミニウムを使うことでアイスが溶けやすいことを説明し始める─という具合です。アイスクリームが好きだということが、このプロダクトを通してコミュニケーションのきっかけになれば面白いと思いました。

1スプーンは両端とも同じ形状なので、どちらか一方をストラップに差し込みます。差し込んだほうはストラップに包まれて汚れなどから保護されるので、使うときはそちら側を口に入れてください。ストラップからはみ出ているもう一方の端はスプーンの柄として機能します。

2ストラップの端はリング形状になっていて、そこにストラップの反対側を通すことでストラップをさまざまなところにぶら下げられます。これはスプーンを装着したままでも、外した状態でもOKです。

3ストラップのリングを利用して、パンツのベルト通しや、カバンの取手にストラップを取り付けましょう。こうしてさりげなくストラップをぶら下げておくことで、「アイスクリーム好き」を演出できます。
そして製品化がかない、やっとスプーンを身に着けて街へ出かけました。最も活躍したのは新幹線の中です。新幹線の車内で販売しているカップアイスは、おそらく世の中でいちばんカチコチなのではないでしょうか。東京駅から新幹線に乗った場合、熱海あたりで買っても食べられるのは浜松を通過するころ。このスプーンを開発する前は、アイスがあまりにもかたいので、ホットコーヒーを一緒に買ってアイスにかけ、アフォガードにしていただくのが常でした。しかし、本来アフォガードは普通のコーヒーではなく、エスプレッソでなくてはなりません。何とも満足いきませんでした。すべてアイスがかたすぎるのが原因ですが、売り子さんに文句を言うのは筋違い。ここでスプーンが登場するというわけです。

1ストラップは伸縮性のあるシリコンなので、はみ出ているスプーンの柄をつかんで引っ張ると、簡単に取り外せます。スプーンを装着するときは、逆の手順で行います。

2スプーンのへこみに親指の腹を置くと、持ったときに力を入れられるため、確実にホールドできます。この親指の熱が本体のアルミを通してカチカチのアイスに伝わり、素早く溶けるのです。それでは、いただきます!
アイスを購入する際、お姉さんに「あ、スプーンはいりません」と宣言し、腰にぶら下げたスプーンをおもむろにストラップから外します。親指の腹でへこんだ柄の部分をホールドし、手の熱を伝えながらカチコチのアイスの掘削作業に入ります。柄の部分はストラップから露出していますが、口に運ぶ部分はストラップで覆われているので衛生上の心配もありません。売り子のお姉さんや周囲の乗客の目線を尻目に、するするとアイスに差し込まれていくスプーン。あぁ、この瞬間がこのスプーンを開発して得た最高の瞬間でした。
「15.0%」のスプーンやストラップを通して、アイスクリーム好きの人が気軽にカミングアウトできる、そんなふうになればいいなと思っています。
(文:寺田尚樹)
アイスっ娘 icecco

http://icecco.com/
アイスが大好きな女の子とカメラマンがタッグを組み、おいしい表情をとらえるプロジェクト。真野恵里菜さんや伊藤寿賀子さんをはじめ、女優・アイドル・モデルが多数登場している 。
岩村捺未(PASSPO☆)
2009年に空と旅をテーマに結成されたガールズロックユニット「PASSPO☆」のクルー(メンバー)。通称「なちゅ」。アイスクリームが主食(自称)。10月14日に東京・品川ステラボールにてライブ「PASSPO☆ワンマンフライト」、10月16日にニューシングル「GrowingUp」を発売する。