15.0% My Dear Ice Cream Lovers

デザイナーが語る15.0%

第1回 
素材の合理性にかなったアイスクリームスプーン

「Mac People」誌 2012年12月号「モケイ的モノ作り3-1」掲載記事 撮影/小林修士(KIND)

私は建築の設計をする傍ら、生活にかかわるさまざまなプロダクトのデザインもしています。ライフスタイルの価値観のヒントになるような製品を提案することで、豊かな、そして楽しい気持ちを多くの人と共有できればと考えています。今回からは、そんなプロダクトのうちのひとつ、「15.0%」のお話をしたいと思います。

まずは、スケッチ。アイスクリームスプーン No.01 vanillaのスケッチです。全体のボリューム感を実寸で描きます。基準となる寸法や面のつながり方をイメージしながら、のちに3Dデータ化することを踏まえてスケッチを起こします。この段階でバリエーション展開も想定し、同時進行でデザインを詰めていきました。

建築家は空間を設計するときに素材にとても気を使います。物理的な特性や強度、風合いなど、総合的に判断して選ばないと、同じかたちの空間であっても質が大きく変わってしまうからです。
プロダクトデザインにおいても表面上のかたちや美しさよりも、なぜその素材でできているのかといった合理性が気になってしまうのが建築家のクセのようです。

「15.0%」の立ち上げのきっかけは、富山県高岡市の、タカタレムノス/高田製作所さんからの依頼でした。高岡は古くから鋳物の生産が盛んで、お寺の鐘から仏具、インテリア小物まで、銅、真鍮、アルミニウム、スズなどを鋳造・販売するメーカーが多くあります。タカタレムノスもそのひとつで、栓抜きや箸置き、コースターなどを手がけていました。それらの新しいデザインを、と持ちかけられたのですが、自分自身が日常的に使わないため、あまりピンと来ませんでした。しばらく考えた末、「まったく違ったものをやりませんか?アイスクリームスプーンを作りませんか?」と提案したのです。

アルミニウムの試作品で製作するまで、意図した「熱伝導効果」が実現できるのか不安でした。なので、スプーンの縁に接しているアイスクリームが目に見えて溶けていくのがわかったときには安心しました。この段階でスプーンの握り具合、重さのバランスも同時に確認します。これらも実際の素材でないとわかりません。

依頼を受けたにもかかわらず、まったく関係ないものを持ちかけることは、仕事を断っていると思われても仕方ありません。とても勇気がいることでした。しかし、アイスクリームスプーンは、アルミニウムという素材の特性を生かした合理的な提案だという確信がありました。また、世の中にアイスクリームが嫌いな人はそうはいないはずです。市場性もあるのではないかと判断したのです。
私自身、日ごろからアイスクリームを食べるときに、冷凍庫から出したばかりのカチカチのアイスがすぐに食べられないのをじれったく思っていました。付属の木やプラスチックのスプーンではまったく歯が立ちませんし、ティースプーンだと手が痛くなってしまいます。

スプーンにある程度の厚みを出せば握りやすくなり、熱伝導率が高いアルミニウムのスプーンを使えば、握った手の熱を伝えることでアイスを溶かしながらすくい出せます。どんなにアイスがカチカチでも、すぐに食べられそうです。そんなアイデアをスケッチに起こしてクライアントに提案してみました。
(文:寺田尚樹)


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